ゆきちんの読書記録(2005〜)

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『約束の冬 下』/宮本輝

 職場の先輩にいただいた『夢見通りの人々』がきっかけとなり、はまった宮本輝。全集に手を出したのはこの方くらい。それ以来、新刊が出れば手にとっています。エッセイは苦手なので読んではいませんが。
 久々でしたが、文章や話の進め方が「そうそう、この感じ、この感じ」と嬉しくなります。中にはのりきれない作品ももちろんあるのですが、この『約束の冬』は手にして良かったと思える作品でした。
 あとがきに大人が幼稚化していることと、「こんな人物が周りにいたらいいなと思うような人ばかりを書いた」というようなことが書いてありました。それを読んで、なるほど、と。二人の視点で話が進んでいきますが、その二人の人物をはじめ、彼らをとりまく人々や出逢う人々が素敵だなと思わせる何かを持っている。
 タイトルにもありますが、『約束』という言葉が折にふれて出てきます。約束、約束。私は日常ではあまり使わない。決め事をしないというわけではなく、『約束』という言葉を使わないなぁと思いました。その代わり、使うときは重たいような、改まった気持ちになりますね。
 15歳の少年が7歳年上の女性に手紙を渡すのです。10年後の自分の誕生日にある場所へ来て下さい、と。その時自分は25歳になっている。そしてあなたへ結婚を申し込むつもりです、と。『冷静と情熱のあいだ』を思い出しました。
 それぞれのラストはあら?と思ってしまうくらいに安直だったような気がしますが、それまでの過程が良かったです。
(2005.7)

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